税務調査が変わる!?

更新日: 2013/01/09

税務調査が変わる!?

平成23年度の税制改正において、国税通則法が改正されました。
大きな改正事項は、減額更正の請求期間と増額更正の期間がともに5年に統一されたことです。間違って所得申告を過大に計算したため多く納税した場合などは、1年分しか税金の還付請求ができなかったのですが、今後は5年分更正請求ができます。反面、税務署が増額更正処分できる期間も、例えば所得税は3年(法人税は従来より5年)でしたが5年に延長になりました。つまり、税務調査は通常5年分行われることが想定されます。
もうひとつの重要な改正は税務調査手続きが明確化されたことです。主な改正項目は次の通りです。

1.事前通知

納税者に対し実地の調査を行う場合は、納税者及び税理士に対し、調査を行う旨及び次の事項をあらかじめ通知します。

    1. 調査開始日時
    2. 調査開始場所
    3. 調査の目的
    4. 調査対象税目
    5. 調査対象期間
    6. 調査対象となる帳簿書類その他の物件

これまでは、ほとんど税理士に税務調査の連絡がありましたが、今後は納税者にも必ず連絡があります。ただし、納税者の方から詳細は税理士を通じて聞くことにしたい場合は、その旨を調査担当者に伝えれば今まで通り税理士で対応が可能です。
事前通知を受けた調査開始日時については、納税者や税理士の都合を充分考慮して決めることができます。
事前通知なしの無予告調査は例外的に従来から行われていましたが、今回、事前通知を要しない税務調査が一定の事由のもと法定化されました。しかし、無予告調査といえ任意調査の範囲内です。納税者や税理士の日程を調整して改めて調査すべきです。

2.帳簿書類の「提示・提出」「留置き」
「帳簿書類その他の物件の検査」と規定されていましたが、「帳簿書類その他の物件を検査し、又は提示・提出」に改正されました。
また従来、税務調査で任意に帳簿書類を税務署に持って帰る、いわゆる「預かり」が行われていました。今回の法改正で、必要があるときは調査において提出された物件を留め置くこと(預かり)が出来ることとされました。ただし納税者の理解と協力のもとその承諾を得て実施することになっています。

3.調査の終了の際の手続き
改正により終了手続きが法律上明確化されました。

(1)申告内容に誤りがない場合

「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」が書面で出されます。この通知書は税目別、課税期間別に非違が「あり」「なし」として表示されます。

(2)申告内容に誤りがある場合

納税者に対して「調査結果の内容の説明」であることを明示した上で非違の内容、金額、理由を説明します。そして税務職員は、納税者に対して修正申告や期限後申告を勧奨することが出来ることになりました。この場合、納税者がその修正申告等をした場合、不服申立てをすることは出来ないが更正の請求をすることが出来る旨を説明するとともに、その旨を記載した書面を交付しなければなりません。
また実務上、再調査が行われることが例外的にありましたが、今回の改正により、修正申告等の提出後、更正決定後でも、新たな情報を把握したときなど、再調査を行うことができる旨が法定化されました。

改正の趣旨
個別に改正項目を見ると課税庁側に新たに調査権限が拡大された部分があると解釈しがちですが、今回の税務調査手続きの改正は、調査手続きに関する従来の運用上の取り扱いを法令上明確化するものです。納税者にとって調査が厳しくなり新たな負担を強いられたりするものであってはなりません。
国税庁は改正が「調査手続きの透明性及び納税者の予見性を高め、調査に当たって納税者の協力を促すことで、より円滑かつ効果的な調査の実施と申告納税制度の一層の充実・発展に資する観点及び課税庁の納税者に対する説明責任を強化する観点から行われたものです。税務調査は、社会通念上相当と認められる範囲で、納税者の理解と協力を得て行う。」と明言しています。