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更新日: 2007/12/20
国民の格差社会への関心が高まってきています。1980年代までは、日本の社会は貧富の差が少なく総中流社会であるという認識が圧倒的でした。しかし、近年、マスコミが国民に対して「日本では格差拡大の現象が起きていますか」という問いに対して、7~8割の人が「そう思う」と答えています。また、内閣府の「国民生活選好度調査」でも近年になるほど不平等感を持つ人が増えてきています。もはや国民の大多数は、社会の格差拡大を実感しているといえます。
所得の再分配機能
所得格差を緩和するためには、所得の再分配が必要となります。資本主義初期の時代には、国家は所得の分配状態に中立であるべきで、分配自体に介入すべきでないとされていましたが、資本主義が高度化するに従って、税を通じて所得の分配をし、公正な社会秩序を保つ必要があると主張されるに至りました。税は、所得に直接関ってくる要素であり、所得格差に与える影響は大きいからです。
わが国においても、自由経済を基本としつつも、まがりなりにではありますが税による所得再分配という形で進められてきました。
所得分配の不平等化
所得格差の拡大について平成16年6月政府税調基礎問題小委員会に提出されたジニ係数(所得・資産分配の不平等などを示す指標)の資料によると、税及び社会保障による再分配前の所得ジニ係数は、昭和56年の0.3491が、平成14年には0.4983と上昇しています。
ジニ係数目安として | |
*0.3~0.4 | 少し格差はあるが、競争の中で向上には好ましい面もある。 |
*0.4~0.5 | 格差がきつい。 |
*0.5~ | 特段の事情がない限り是正を要する。 |
とされていますから0.4983は相当にきつい格差といえます。
税による再分配後の所得ジニ係数は、昭和56年の0.3317が平成14年には0.4941と上昇しています。税及び社会保障による再分配前の所得ジニ係数と比較するとわずかに改善されていますが、まだまだ相当にきつい格差といえます。
この時期と同じくする税制の改正をみてみますと、ここ20年ぐらいで所得税の累進はかなり緩和されています。税率は従来の15段階から5段階に縮小し、最高税率を70%から50%に引き下げるとともに税額区分の幅を大幅に拡大しました。その結果、多くの納税者にとって所得税がフラット化することとなりました。また相続税においても平成14年までは800万円以下10%からはじまり20億円超70%という累進構造だったが平成15年改正で1000万円以下10%から3億円超50%に引下げられ所得税と同じようにフラット化することとなりました。そして、忘れてはならないのが逆進的である消費税の導入と、その後の税率引き上げです。
昭和56年以降のジニ係数の上昇とこの間の税制改正を重ね合わすと、税による所得の再分配機能は完全に阻害されていることがわかります。
あとがき
格差社会に対し、「格差の何が悪いのか」「格差が拡大してもいいのではないか」といった議論もあるでしょうが、格差社会は、人間社会の相互依存そして共存共栄の精神から好ましいことではありません。貧富の差が拡大し、自殺や犯罪が多発し社会環境の悪化を望む者はいないでしょう。もっとも格差は常に相対的なものですから全く格差のない社会が実現できることはありません。自分の生活に一定の安心感や豊かさがあれば一様は満足できましょう。そうであるならば富裕者がいたとしても大して妬むこともないでしょう。
近時の若年者の貧困、高齢者の貧困等を見るにつけ、格差の我慢も限界に近いとさえ感じます。低所得者には、社会保障もさることながら担税力を配慮した優しい税制であってほしいと願うものです。